日本国著作権法とConvention de Berne pour la protection des oeuvres litterailes et artistiquesを対照し、理解を深めたい。

2007年12月25日火曜日

著作権法 第1章 第1節 第2条 第7号の2 公衆送信の定義

「公衆送信」とは著作権法上では「放送」、「有線放送」、「自動公衆送信」の三つに分けられ、公衆に対して作品を送信する事をいいます。
その手段がBroadcastすなわちBroad(広範に)Cast(送り出す)の名前が示すとおり
「公衆に対して同一の情報を一斉に送信するものと、ファックスサービスやインターネットのホームページのように公衆のアクセスに応じて個々に情報を送るもの」(著作権逐条講義29p)
大別すると
・放送(無線による放送)-有線放送(有線による放送)
・自動公衆送信(オンディマンドタイプ)
の二つに分かれる。

1997年の著作権法改正において、従来の「有線放送」を含む「有線送信」と「放送」など送信全体を示す概念として「公衆送信」という定義がつくられた。

海外では「放送」と「有線放送」が区別されており、著作権法上の取り扱いが違う国もあるので、「公衆送信」と大きく括っておいて、その中で「放送」と「有線放送」そしてIPマルチキャストを含むVODサービスなども包含した「自動公衆送信」という定義が導入された。

条文を見てみよう
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

非常にややこしい。
整理すると
「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。」
ということだけなのだが
「電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)」
こういうややこしい条文の場合は加戸先生の「著作権逐条講義」にあたらないと話がわからない。
「もともとはコンサートなどで歌手が歌をマイクを通して歌った場合に、前にいる人はその歌手の歌唱を聴いていますけれども、後ろにいる人はスピーカーという受信装置を通じて公衆送信を聴いているということになりかねませんが、この場合には公衆送信という概念で押さえるのはおかしかろうということで、少なくとも同一構内で行われている限りは公衆送信という概念をとらない」(著作権逐条講義31p)
さらに、「その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内」とは、一つのビルの中で1階、2階、3階がある事業者によって占有され、たとえば1階の演奏が2階、3階にも流されている場合には「演奏」と評価する。という事です。

プログラムの著作物の送信を除く」という文言は、たとえば一つのビルの中である会社が1階、2階、3階を占有しており、各フロアのPCがLANで結ばれている場合、その会社の1つのPCにインストールしたプログラムが他のフロアのPCから自由に使われるというケースがある。これはプログラムの著作者に経済的不利益を与えることが考えられるので」(著作権逐条講義32p)挿入されたということです。

公衆送信=Public communicationという事であるならば、これはベルヌ条約で規定されている。
Article 11bis Droits de radiodiffusion et droits connexes:

(1) Les auteurs d’œuvres littéraires et artistiques jouissent du droit exclusif d’autoriser:
(i) la radiodiffusion de leurs œuvres ou la communication publique de ces œuvres par tout autre moyen servant à diffuser sans fil les signes, les sons ou les images;
(ii) toute communication publique, soit par fil, soit sans fil, de l’œuvre radiodiffusée, lorsque cette communication est faite par un autre organisme que celui d’origine;
(iii) la communication publique, par haut–parleur ou par tout autre instrument analogue transmetteur de signes, de sons ou d’images, de l’œuvre radiodiffusée.


(1)
文学及び芸術作品の作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
(i)
作品を放送すること、又は作品を、記号、音若しくは影像を無線で送るその他の手段により、公に伝達すること。
(ii)
放送された番組を元の放送機関以外の機関が有線又は無線で公に伝達すること。
(iii)
放送された番組を、拡声機又は記号、音若しくは影像を伝えるその他の類似の器具を用いて、公に伝達すること。

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著作権業界に居るものです。この度著作権法をきちんと勉強したく、Blogを作りました。